当所で行なう心理療法のもう一つの柱がカウンセリングです。 カウンセリングというと「アドバイスをもらう」というイメージを持つ方が多いようですが、心理療法におけるカウンセリングは治療者が「話す」ことよりも、むしろ「聴く」ことに重点を置きます。
もちろん全くアドバイスをしないわけではありませんが、それよりも患者さんの気持ちを少しでも汲み取ることのほうが大事です。
正しいことが分かれば悩みや症状がなくなるのであれば、本をたくさん読めば治ってしまうことになります。しかし現実にはめったにそんなことはありません。考えても考えても堂々巡りをしてしまい、たとえ正しい答が解っていてもどうすることもできない、言わば「解っちゃいるけどやめられない」ことがほとんどです。
ですから、治療者は正しい答を授けるよりも、「どこまで患者さんの気持ちを理解できるか」ということにエネルギーを注ぎます。そして、その方の話す言葉や感情のみならず、態度や仕草から無意識にまで耳を傾けようとします。
感情に善悪があるわけではありません。たとえそれが「恨み」や「憎しみ」、「怒り」のような負の感情であっても、人間である以上それを持つのは当たり前であり、それ自体に罪があるわけではありません。しかし、そのような感情を持つ『私』を何の罪悪感も持たずに許すことは、なかなか難しいことです。そんな時、その感情をさらけ出し、それを理解し受け止めてもらえる人が一人でもいたならば、それだけで心が癒されるのではないでしょうか。
カウンセリングの目的は、そのような過程の中で感情を自由に表現できるようになり、自分を許し、自己理解を深めることにあります。それは、悩みや症状を解決するのみならず、その方の心の成長を助けることでもあるのです。