催眠とは眠ることではありません。第三者がそれをみるとそのように感じるかも知れませんが、どんなに深く催眠に入っても自分が何を聞いて何をしているのか全てわかっています。ただ完全催眠に入った場合、催眠中のことを全く覚えていないことがあります。
催 眠そのものに違いがあるわけではありません。しかし、ショー的催眠が面白おかしく『見せる』のが目的であるのに対して、催眠療法の催眠は『治療』が目的に なります。従って前者が一回限りで良いのに比して、後者は繰り返し繰り返し継続して行うことに意味があります。スピーディーに格好よくやるのがTVでの催 眠ですが、ゆっくりとじっくりと進めて行くのが催眠療法であると言えましょう。まさに「継続は力なり」が催眠療法の特質と言えましょう。
TVの催眠を見ていて、このような不安を抱く方が多いようです。しかし心配はいりません。催眠はどんなに深く入っていても意識は無くなりません。従って、 どうしても受け入れたくない暗示にはいつでも抵抗できるのです。しかし、それをあまりにもセラピスト(治療者)が強要する場合には、治療倫理に反しますの で、そこの場での催眠療法は受けない方が無難でしょう。
催眠は時として奇蹟的な効果を現わす場合があります。さりとて万能ではありません。暗示の効果はメッキのようなものです。たとえ一回で症状が取れたとして も、また再燃・再発する可能性があります。ですから、一回で良くなったとしても有頂天にならず、良くならなくても絶望せず、ゆっくり・じっくり治すつもり でいた方が早く効果が現れます。
催眠には特筆すべき副作用はありません。しかし心身のリラックスが深まるため、虚脱感や倦怠感が生じることがあります。緊張の強い方やストレス過多の場合に起きやすいようです。
催眠療法はさまざまな病気や症状に効果があるとされていますが、特に西洋医学的に治りにくい病気や症状の場合に試してみるべき療法です。病気には『器質 的疾患』と『機能的疾患』がありますが、後者の場合に特に効果が期待されます。しかし、催眠状態には自然治癒力を高める効果があることが分かっており、前 者における改善や治癒も稀ではありません。
何も問題はありません。それどころか、催眠療法を始めたからといって独断で薬を止めてしまうと、リバウンドが強く現れてくる可能性がありますので、かえっ て危険です。主治医の先生の指示には必ず従ってください。通院・服薬をしていない方でも、強い症状でリラックスと集中の困難な場合は、専門医を紹介する場 合がありますので御相談下さい。
催眠現象の中に、このように記憶を消したり(忘却)思い出させたり(復活)する力が存在することは有名です。しかし、経験した記憶の中に強い感情が付随す る場合、その記憶を失うと言っても無意識の中に抑圧するだけであり、体験をしなかったかのように全く消されてしまうわけではありません。ですから例え暗示 によって一時的に記憶を喪失しても、それが不完全な防衛である以上、やがては想起されてくるか、別の症状を作り出す可能性があります。過去の体験における 感情が解決されて、通りすぎた過去としての『ただの記憶』となった時、本当に『忘れる』ことができるのです。また復活においても、その記憶に強い感情が伴 なう場合は困難な事があります。あまり激しい感情の伴なわない記憶に関しては、比較的スムースに思い出す事ができます。
催眠療法に限らず心理療法を受ける際に最も大切な事は、セラピスト(治療者)との信頼関係です。言いかえれば「信じてお任せする」ことです。しかし、初め て会ったセラピストを100%信頼するのは無理な事ですし、そうするには危険が伴ないます。何か疑問に思ったり、不安に感じた時には、その想いを正直にセ ラピストにぶつけてみるべきです。そのうちに段々と信頼関係も深まり、治療効果も現れてきやすくなります。もうひとつ催眠療法を受ける時に大事な事は、能 動的に「何もしない」ことです。意識的に「合わせよう」とか「逆らおう」とか「催眠に入ろう」とせずに、聞えてくる声に素直に耳を傾け、受動的に集中する ことです。
厳密に言えばいません。非常に深く入る人もいれば、「類催眠」と呼ばれる浅い催眠にしか入れない人もいますが、最終的に全く入れなかった事例は殆どあり ません。はじめの数回は緊張と抵抗が強すぎて全く入れなかった人でも、リラックスと集中の訓練を重ねて行くうちに段々と深く入っていけるものです。また深 く入れば入るだけ効果があると思われる場合もあれば、十分に深く入っていても効果がなかなか現れてこない場合もあります。あまり催眠に「深く入るかどう か」にこだわらない方がいいでしょう。